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やはりおかしい大河ドラマ「麒麟がくる」

映画・テレビ・IT
この記事は約4分で読めます。

ピント送りができていない

上に貼った公式まとめ動画の冒頭。主人公が銃で甲冑を狙うが、ハズレて木の幹にあたるというシーン。

弾が木の幹にあたるカット、なにかおかしくないですか?

カメラがちょっとブレているように見えます。

でも、よく見るとそうではありません。

これはブレているのではなく、甲冑から木の幹へ「ピント送り」をしているのです。

下に画像を引用しました。上の画像がカットの頭、下が尻です。

麒麟がくる01
麒麟がくる02

上の画像は甲冑に、下は木の幹にピントが合っています。

ただ、ものすごくわかりにくいですよね。

なぜわかりにくいかというと、ピントが合ってない部分がそれほどボケていないからです。

「ピント送り」というのは、ピント(フォーカス)を合わせるモノ(場所)を変えることで観ている人の視点を誘導する、映画やドラマで昔からよく使われる技法です。ですから、カメラのピントが合う範囲を狭くして、そこ以外がしっかりボケるようにしないと意味がありません。

カメラのピントが合う範囲を狭くするというのは、少し専門的な言葉を使うと、レンズの被写界深度を浅くするということです。これは難しいことかというと、そんなことはありません。そうなるように設定すればいいだけのことです。

ただ、使用しているレンズやカメラによっては、効果的な「ピント送り」ができるレベルまで被写界深度を浅くすることが不可能な場合もあります。

でも、そうだったら「ピント送り」をやめればいいだけの話です。代替できる表現法は他にもあるからです。

この場合の「ピント送り」は、狙った的である甲冑から弾が外れたということを表現するために使われています。これは他のカメラワークや編集でも表現可能なことです。

なぜ「ピント送り」になっていないカットをOKにしたのか、非常に疑問です。

レンズの選び方がおかしい

下に抜き出した本木さんのカット、何かちょっとカッコ悪いと感じませんか?

もちろん本木さんが、じゃありません。

麒麟がくる03

前に突き出した本木さんの腕が、妙に短いというか、つづまって見えますよね。

迫力あるキャラクターを抑えた演技でシブく演じる本木さんの魅力を、撮影が削いでしまっているカットだと思います。

前に突き出した腕が短く見えるのは、望遠レンズを使っているからです。

これは「圧縮効果」といって、たとえばプロ野球中継で、センターカメラの望遠レンズを通して見たピッチャーとバッターの距離が、実際よりも極端に近く見えるのと同じ現象です。撮影レンズは望遠になるほど(高倍率でズームするほど)遠近感がなくなります。

野球中継で高倍率のレンズを使うのは、フィールドにカメラを置けないからです。一方、映画やドラマでは普通、室内の会話シーンでわざわざ望遠レンズを使う必要はありません。

考えられるのは、ふたつの場合です。

ひとつは、あえて使う場合。黒澤明監督が有名ですが、望遠レンズの効果を独自の「世界観」づくりに利用する場合です。

もうひとつはマルチカメラ撮影の場合です。マルチカメラ撮影は舞台収録のように、複数台のカメラで一度に色々なカットを撮るやり方です。

この方法だと、寄りの画を撮るカメラも役者から離れた場所に据える必要が出てきます。近い場所に据えると、引きの画を撮るカメラに写ってしまうからです。離れた場所から寄りの画を撮るわけですから、当然レンズは望遠を使うことになります。

「麒麟がくる」はおそらく後者ではないか思います。

マルチカメラ撮影のメリットのひとつは撮影時間を短縮できることです。1回の演技で必要なカットをまとめて撮ることができますから、1台のカメラでカットをひとつひとつ撮っていく伝統的な撮影に比べて早く撮影を進めることができます。

撮影はコストとの闘いですから、現場に応じた撮影方法をとるのは当然のことです。しかし、それが画面のクオリティに影響するとなると話は別です。日本のドラマを代表する大河ドラマとなれば尚更そうだと思うのですが、いかがでしょうか。

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