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大河ドラマ「麒麟がくる」の撮影で納得がいかない点

麒麟がくる 映画・テレビ・IT
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大河ドラマ「麒麟がくる」の第一回放送を見て、その画面(撮影)に疑問を持ちました。公式YouTube動画の画面を引用して具体的に述べます。

彩度と白トビ

Twitterなどでも話題になりましたが、通常のドラマ(特に時代劇)では考えられないくらい彩度を上げています。下に引用した画面のように、特に自然の緑と衣装・小道具の赤が目に刺さります。狙いがよくわかりませんでした。

ハイライト(画面で最も明るい部分。下の引用画像では空の真ん中。)が白く飛んでいる画面が多く見受けられました。これも他のメジャーな映画やドラマではまず見かけません。彩度同様「あえて」逆をやっているのかもしれませんが…。

広角レンズの多用と構図

広角レンズの多用は、この大河に限らず、朝ドラ含めNHKドラマの特徴だと思います。シーンのはじめにセットの全景と登場人物の配置をしっかり見せておくため、広い範囲を画面に収めることができる広角レンズを使っているのでしょう。これは視聴者が「わかりやすい」よう配慮しているのかもしれません。

しかし、この画面はどうなのでしょう…。天井をこれほど写す必要があるのでしょうか。君主との距離やその威圧感を表現するなら、他にいくらでも撮り方はあると思います。

とにかくこれは非常に特殊な構図です。映画やドラマ(特に時代劇)で、セットの天井が写っているのを見たこと、これまでにどれくらいありますか?

この構図で、主要登場人物がふたりとも、カメラに背を向けて芝居します。芝居の細かいニュアンスはもちろん見えません。そして…

廊下の移動撮影につながるのですが、そのショットの冒頭がこの構図。この後すぐにカメラは下に振られてツーショットになるのですが、僅かな時間にしろ、このように構図が完全に崩れた画をNGにせず使うというのも、あまり見たことがありません。

このシーンも、広角レンズで俯瞰気味に狭い部屋の全体を見せています。画面両側の障子・襖の線がナナメになっていて、ものすごく落ち着かないというか、気が散ってしまうのですが、どうでしょう。時代劇ではまず見ない構図です。「あえて」やっているのでしょうが、その「あえて」の目指すものが私には今ひとつわかりません。

光源とライティング

映画やドラマのライティングは「お約束」の世界です。暗闇のシーンが成立するのは、「暗闇ですよ」というライティングが、作る方と見る方に共有されているからです。

画面内に舞台の一部として窓やスタンドなどの「光源」がある場合、その光源を意識しつつ、カメラに美しく映るようライティングするのが「お約束」だと思います。

下に引用したシーンには、灯明が写っています。舞台となる部屋は、この灯明の光によって照らされているという設定です。灯明はふたつ、向かい合って座る男それぞれの左側に立てられています。

下のアップでは、光秀の左側にある灯明が、画面上手に写っています。

ところが下のカットでは、光秀の顔の左側、つまり灯明のある側に影が出ています。

これはいわば「約束破り」です。「お約束」通りなら、影は灯明の逆側、つまり顔の右側に作るべきです。そしてそれは、難しいことではありません。

最後に

視聴者としての感想ならともかく、日本最高のプロが作っているドラマの画面に、私のような者が難癖をつけても意味がないのかもしれません。しかし、それなりに長く真剣に映画やドラマを見てきた感覚からすると、アート映画ではない大河ドラマで、どうしてこのような画面作りをするのか理解できず、勢いで書いてしまいました。

「麒麟がくる」に限らず、NHKのドラマ・ドキュメンタリーの画面(撮影)は、映画・ドラマの歴史的スタンダードや世界的流行を無視しているようなところがあるように思います。これからもそれがなぜなのか、考えていきたいと思います。

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