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ライト不要のライティング論│照明機材がなくても光の表現はできる

光の表現 YouTube動画制作
この記事は約6分で読めます。

ここではライティングを影のコントールと捉え、照明機材を使わない場合にも役に立つライティング論として簡潔にまとめてみたいと思います。

なぜライトを当てるのか

ライティングとは、撮影のために被写体(写したいもの)にライト(撮影用照明)で光を当てることをいいます。

フィルム時代・アナログ時代は「ライトがないと光量不足で写らない」ということがよくありました。しかし、近年はカメラの進歩によって、日常的な場面でそういうことはなくなりました。

現在、撮影でライトを使うのはより美しく撮影するためです。ただ、やみくもにライトを当てても「より美しく」は写りません。

ですから、ライティングでより美しく撮影するにはまず、美しい画とはどういうものかということを光の観点から考える必要があります。

ライティングにおける美しさとは

撮影における光の美しさとは、大きく2種類に分けることができます。説明的な美しさ表現的な美しさです。

説明的な美しさとは、光が被写体全体にまんべんなく当たり、被写体の表面に影が(ほとんど)ない状態で、被写体が細部までよく見えるという意味の美しさです。

表現的な美しさとは、一方向からの光が被写体を照らし、被写体の表面にはっきり影ができている状態で、見る人が主観的に美しいと感じられる場合の美しさです。

ライティングとは影のコントロール

つまり、ライティングから「光量を稼ぐ」という役割を除くと、あとは影のコントロールという意味だけが残るということです。

思い切って単純化すると、下の図式になります。現実的には完全に影をなくすことは難しいので、相対的なものだとご理解ください。

  •  説明的 ⇔ 表現的
  • 影がない ⇔ 影がある

例えばインタビュー・商品撮影で多いのが前者、映画・ドラマ撮影で多いのが後者です。

さて、影をコントロールするには、光源について理解する必要があります。ただ、ここでは細かい光源の分類には触れません。基本的な理解のために、あくまで大づかみに見ていきます。

影と光源の関係

影と光源の関係を、自然光で考えてみます。

自然光は影のでき方でみると、曇りと晴れに分類できます。

  •   曇り ⇔ 晴れ
  • 影がない ⇔ 影がある

ここで、なぜ曇りだと影が薄くなり、晴れだと影が濃くなるのか整理します。

曇りだと影が薄くなるのは、空全体が一様に光っているから、つまり、多方向からの光がモノを照らしているからです。

晴れだと影が濃くなるのは、太陽が強く光っているから、つまり、一方向からの強い光がモノを照らしているからです。

影と光源のこの単純な関係が、撮影におけるライティングの本質であり、すべてだといっても過言ではありません。

照明機材を使ったライティングは、いわば曇りと晴れのシミュレーションです。それを理解していれば、照明機材を使わなくても美しい画が撮れる場合もあるし、理解していなければ、高価な機材を使っても美しいライティングはできません。

以下で、照明機材にコストをかけず影をコントロールする具体的な方法を考えていきます。

晴れ

説明的ライティングの方法

屋外

屋外で曇りの画が撮影したくても、天候はコントロールできません。

晴れの太陽が作る屋外の強い影を人工光で持ち上げるには、HMIという非常に強力なライトが必要です。当然大きなコストがかかるので、CMやドラマなどの現場でしか使われません。

被写体の上に半透過の幕を張って直射日光を拡散したり、レフ板の反射光で影の部分を持ち上げたりするのは安上がりでよく使われる方法ですが、人手がかかります。

コストも人手もかからないのが、光を考えて場所やアングルを選ぶという方法です。

撮影場所に直射日光の当たらない日陰を選べば、光量は落ちますが、曇りと似た条件になります。また、人物の寄りを撮影する場合は、逆光で撮影すれば顔に影が出ません。

屋内

屋内では、近年安価で光量の強いものが出ているLEDライトが威力を発揮します。パネルにLEDを並べて面光源にしたタイプは、スポット型のものより影が出にくくなっていますので、インタビュー撮影や商品撮影に適しています。

スポット型のライトでも、ライトの前に擦りガラス状のディフューザーをつけたり、被写体に直接当てないで白い壁などにいちど反射(バウンス)させれば、光が拡散して影を弱めることができます。

しかし、そういう最新の機材や基本的なワザを使っても、ライト1つで光を全体に回すのはムリです。ライトだけで「曇り」の状態を作るには、ライトを複数用意する必要があります。

ライトを使わない・使えない場合は、やはり光を考えて場所やアングルを選ぶことが大事です。屋内でも、窓や室内灯との位置関係で影のできかたが違ってきます。

また、カーテンやブラインドで窓からの光量を調節したり、ONにする室内灯の個数や明るさを変えたり、できることはたくさんあります。レフ板の代わりになるものがあれば、それを使うのも手です。たとえば白いシーツは、フレーム外の壁にかけたり床に置いたりするだけで効果を発揮する場合があります。

HMI
HMI

表現的ライティングの方法

屋外

表現的なライティングの場合、それを美しいと感じるかどうかは、映像全体のコンテクストと見る人の主観によると思います。

ただ、表現的なライティングを意図的におこなう場合は、順光(カメラが太陽を背にし、被写体に正面から太陽光が当たっている状態)の撮影はあまり意味がありません。だって、影で表現してこその撮影なのですから。

表現は細かく微妙なことにこだわってこそですから、できれば影の強弱もコントロールしたいところです。そういう場合には、やはりレフ板などで影に光を入れることになります。

晴れの屋外で曇りに近い撮影をする方法はいろいろありましたが、曇りの屋外で晴れのような強い影を出すのは、HMIを使わなければムリです。

屋内

表現的なライティングをするには、スポット型のライトを使います。具体的な手順としては、昔ながらの三点照明が参考になると思います。

※「表現的なライティング」という言葉は、ここでの私独自のものですので、本来「三点照明」とは関係ありません。「三点照明」は昔からライティングの基本とされている技法です。

まず被写体を照らすいちばん強いライト(主光源、またはキーライト)を決めます。次に主光源でできた影を照らすライト(補助光源、またはフィルライト)をセットして、影の強さ(コントラスト)を調節します。3つ目のライトは、バックライトとして後ろから照らして被写体の輪郭をハッキリさせてもいいし、被写体の背景に当ててニュアンスを作ってもいいと思います。

ライトを使わない・使えない場合は、説明的ライティングの場合と同じです。

特に窓をうまく使うと、多彩な表現が可能になります。また、画面内に室内灯やろうそくなど光源自体を入れ込むと、空気感がガラリと変わります。ライトを使わなくても、工夫次第でかなりの表現が可能だと思います。

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