インタビュイー(インタビューの相手)が能動的に話すインタビューこそ、良いインタビューだと私は考えています。インタビューの目的は相手から情報を得たり、相手の気持ちや本音を訊いたりするものですが、強いられたり、いやいやだったりする相手からそういうことができるとは到底思えません。インタビュイーに能動的に話してもらうために気をつけるべきことをまとめました。
ダメな質問をする
良いインタビューをするには、まずインタビュアーがダメな質問をしないように心がけることが大事だと思います。ダメな質問とは、次のような質問です。
的はずれな質問
インタビューのテーマやインタビュイー自身についてのリサーチ不足から生じる、的はずれな質問は最悪です。知ろうという意欲が感じられない相手に喜んで話をしてくれる人はいません。基本的な情報は事前にしっかり入れてから現場に入るのは当然のことです。
専門的だったりプライベート要素が強かったりする話題に関して知ったかぶりの質問をするのも、同様に的はずれです。自分へのリスペクトを欠く相手に、人はすすんで話をしようとは思いません。
相手が嫌がる質問
相手が嫌がる質問をぶつけることで本音を引き出せると考えるのは、私にいわせれば完全に間違った思い込みです。それは「嫌がらせ」に対する防御反応を本音だと、インタビュアーが勝手に決めつけているだけです。
同様に、バラエティ的なツッコミやイジリも最悪です。お約束で成立しているテレビ番組ならいざしらず、一般的なインタビューでは相手に嫌悪感を抱かせたり、相手を萎縮させたりするだけで、何ひとついいことはありません。
人は喋りたくないことは喋りませんから、喋りたいと思って喋った言葉の中にしか本音はありません。たとえそれが嘘であったとしても、その嘘の中にこそ真実があると私は思います。
ざっくりした質問
たとえば「今日はいかがでしたか?」という質問は、気持ちを尋ねているのか、評価を尋ねているのかわかりません。インタビュー慣れした人なら適当に判断して応えてくれるでしょうが、そうでない人は戸惑ったりプレッシャーを感じたりすると思います。
こういうざっくりとした質問をしてしまうインタビュアーは、ノープランで現場に挑んでいるのでしょう。相手が忖度して応えてくれるだろうと高を括っているのです。実に不遜な仕事ぶりだともいえるし、子供のように依存的な態度だともいえると思います。
繰り返しの質問
同じ内容の質問を繰り返しても、たいていは同じ言葉しか返ってきません。にもかかわらず何度も同じことを訊かれると、インタビュイーの心に不信感が芽生えます。質問の繰り返しは避けるべきです。
「さらに詳しく訊きたい」「別の表現で話してほしい」と思うなら、そのように誘導する言葉を工夫しなければなりません。ストレートにそうお願いするのも悪くはないと思いますが、複数のパターンで何かを説明するのは基本的に難しいことです。ですから、それをインタビュイーに丸投げするのではなく、一緒に表現を探すような態度が不可欠だと思います。
偉そうな態度で臨む
いちばん大事なのがインタビュアーの言葉なら、次に大事なのは態度だと思います。
実は私自身、過去に何度かインタビューを受けたことがあるのですが、インタビュアーの偉そうな態度にゲンナリしたことは1度や2度ではありません。そういう態度をとるのは、新聞やテレビなどオールドメディアの看板で仕事をしている、一定年齢より上の人たちが多かった印象があります。彼らの態度が横柄になるのは、会社名という下駄を履いた自分に、実は自信が持てていないことの表れなのかなと思っています。
インタビュアーとしていうと、偉そうな態度で臨んで得することはなにもないと思います。特に最近は「上から目線」が非常に嫌われていますから、インタビュイーに嫌われるという最悪のデメリットしかありません。言うまでもありませんが、嫌いな人に情報をシェアしようとか気持ちを伝えようとか思う奇特な人は存在しません。
話は逸れますが、たまに耳にする圧迫面接も、合理的に考えてまったく理解に苦しみます。就活生のストレス耐性を試そうということでしょうが、短時間の面接でなんのメソッドもなく、ただ高圧的な言葉と態度への反応を見るだけで就活生の何らかの能力がはかれるとは到底思えません。かえって理不尽な会社だという噂が広がるデメリットのほうが大きいのではないでしょうか。そういう面接担当者は、己の自己肯定感の欠如からくる嗜虐性を、就活生に対する厳しさだと思い込んでいるだけだと思います。
インタビューに戻しますが、「偉そう」「上から目線」がダメだからといって、必要以上にへりくだる必要もないと思います。慇懃無礼という言葉がある通り、過度の「下から目線」はかえって相手を引かせてしまいます。あくまでも対等・フラットな関係性が理想です。
ただ、会話においては基本的に質問するほうが主導的で上の立場になりますから、インタビュアーになったら常に自分を「下げる」ことを意識しないと、意図しなくても「上から目線」と取られる恐れがあるので注意が必要です。
雰囲気作りをしない
最後に、良いインタビューをするには、場の雰囲気づくりも不可欠だと思います。
退屈そうな相手に一生懸命話そうと思う人はいませんし、険悪な空気の中でいい話をしようと思う人もいません。インタビューといえど、基本は日常の会話と同じです。話しやすい雰囲気、親密な空気を作ったほうがいいのは当然のことです。
ではどうすればそのような雰囲気が作れるのでしょうか。
私の場合、まずはしっかりご挨拶と自己紹介をするよう心がけています。当たり前のことなのですが、撮影に気を取られているとつい忘れてしまう事があるからです。それから、言葉づかいにも注意しています。敬語はもちろん、単語のチョイスでも質問のニュアンスは違ってきます。
そして、最も大事にしているのが「聞く仕草」です。もっと具体的にいうと「相槌」です。あなたの言葉をしっかり受け止めていますというメッセージを、ジェスチャーではっきりと表すのです。
「ジェスチャーで」というのは、声を出して返事をしたり合いの手を入れたりしてしまうと、あとで編集がやりづらくなるからです。ですから、声を出さない代わりに、日常より少し大げさに頷いたり体を揺すったりします。
日常の会話と同じで、機械的な相槌ではすぐ相手に見抜かれます。しっかり聞いた結果としての反応を、動きや態度でインタビュイーに確実に伝える事が大事です。
しかし、それでも場の空気が淀んでくることがあります。日常会話なら、そういうときは話題を変えます。インタビューなら一層、そういう雰囲気に敏感である必要があります。
インタビュー現場の雰囲気は100%インタビュアーの責任ですから、すぐに空気を変えるような言葉を投げかける必要があるのはいうまでもありません。
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