音楽好きの方にはすぐご理解いただけると思うのですが、コンサートを会場で見るのと、後から映像で見るのは、まったくと言っていいほど違う体験です。どちらにも良い点があるので、ライブにも参加し円盤も買うといった方も多いと思います。
この「直接体験する」ことと「記録で見る」ことの、いわば相互補完的な関係は、他のジャンルにも広く当てはまると思います。今回は、講演やセミナーを動画化するメリットに的を絞って考えてみます。
聞き手のメリット:内容がわかりやすくなる
音声が聞き取りやすくなる
講演やセミナーを動画化する最大のメリットは、話し手の言葉が聞き取りやすくなることです。
プロの音響技術者がいるホールでは、スピーカーからの音声が客席のどの位置でもクリアに聞こえるよう音響機器が調整されている、というのが建前です。しかし、広い空間に均一に音声を行き渡らせるのは、プロといえど非常に難しいことです。ホールの構造が良くなかったり、設備が老朽化していたりして、技術者の努力だけではベストな状態にできない場合も少なくありません。また、多数の聴衆も音声の聞き取りやすさに大きく影響します。
逆に小さな会場では、十分な音響設備がなかったり、音響担当者がおらず主催者が機器を操作しなければならなかったりします。マイクが突然キーンという大きな音を立てたり、スピーカーのボリュームが小さすぎて話し手の声がよく聞き取れなかったりという音響トラブルは、ほとんどの人が聴衆として経験したことがあるのではないでしょうか。
講演やセミナーをプロがビデオ撮影する場合、音声は話し手のマイクからラインで(音声ケーブルを通じて)収録します。または、話し手に撮影用のワイヤレスピンマイクを装着していただいて収録します。いずれにしても、話し手の口元のマイクから直接録音するわけですから、周囲の環境に左右されずクリアに音声を収録できます。
プロジェクター画面が見やすくなる
現在の講演やセミナーでは、パワーポイントのスライドや画像・映像を見せるためのプロジェクター画面が必須であると言っても過言ではありません。このプロジェクター画面が見やすくなるのも、動画化した際のメリットです。
大きなホールの後方の席では、プロジェクター画面の小さな文字はたいへん見づらくなります。動画化された講演やセミナーでは、そういうことは起こりません。撮影時にプロジェクター画面をアップにすることもできますし、編集時に元の画像ファイルをインサートすることも可能です。
話し手の表情が見える
人の話を聞く際は、話し手の表情が見えるかどうかで印象が大きく違ってきます。もちろん、表情が見えたほうが興味も増し理解も深まることは言うまでもありません。しかし、大きなホールの後方の席では、話し手は遠くてよく見えません。また、現在の講演やセミナーでは、プロジェクター画面を見やすくするために話し手の照明を暗くしてしまうことがよくあります。
業務用のビデオカメラなら高倍率のレンズで話し手の顔を写すことができますし、かなり暗い照明でも十分明るく話し手の表情を撮影することができます。
繰り返し何度でも視聴できる
講演やセミナーの会場では、聞き逃したり見逃したりした箇所をリピートすることはできません。動画ならそれが可能です。
自分が参加したライブであるにもかかわらず、後からそのDVDを買い求める音楽ファンが多数いるのと同様、講演やセミナーでも、会場で見聞きした内容を、後日改めてじっくり確認したいと思う方は多くいらしゃると思います。
話し手のメリット:内容をブラッシュアップできる
フィードバックが可能になる
講演やセミナーをビデオ撮影することで、話し手は次の機会に備えてのフィードバックが可能となります。映像で自分のパフォーマンスを再検討し、次回の実施に向けて改善をおこなえるのです。
上の項目でまとめた「聞き手のメリット」は、そういういう意味で、話し手にとっても大事なポイントであるといえます。自らのスピーチやスライドの見せ方などを細部までしっかりとチェックするには、音声や映像のクオリティが高いビデオのほうが役に立つからです。
内容を編集できる
動画の最大の強みは編集できることです。不要な場面ををカットしたり、資料映像を追加したり、タイトルをつけたりすれば、すでに終わった講演やセミナーの内容を後からブラッシュアップすることが可能です。
民生用カメラやスマホを固定して撮影しただけの、いわば撮りっぱなしのビデオは、記念にはなるでしょうが将来何度も見直されるかどうかはわかりません。講演やセミナーを記録として価値ある映像にするには、適切に編集してコンパクトにまとめることが必要です。
主催者のメリット:展開の可能性が広がる
あらゆるシーンで長く活用できる
講演やセミナーを動画でコンテンツ化・アーカイブ化すれば、どこでも簡単に、何度でも繰り返して活用することが可能になります。複数箇所で同時に上映会を開くこともできますし、DVDで配布することもネット配信もできます。動画にすることで機会は無限に生まれますから、その使い方によっては費用対効果は無限大といっても過言ではありません。
ただ、気をつけなければならないのは、人は生で見るときより動画で見るときのほうが、見る目がシビアになるということです。講演やセミナーの会場では許容範囲だった音声の聞きづらさ、スライドの見えにくさ、内容の冗長さなどが、動画で見ると非常に気になるということがよく起こります。ですから、講演やセミナーを動画化する際は、信頼できるプロに依頼することをおすすめします。
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